あれから、俺は何も変わってない。

 
ちょうど1年前の今日の朝、
親父が危篤だと言う連絡を受けて
新幹線に飛び乗った。


「今日はこどもの日だろ、
 今日逝くのだけはやめてくれよ」

新幹線の中でずっと思ってた。


病院に着いたときには夕方。
もう話をすることができない状態だった。

親父がいた病室は個室になっていて、
風呂もトイレもついているような部屋だった。

緩和ケア病棟。

いわゆる・・・
最期の人を迎える病室であったに違いない。



俺は親父の好きだったビールを買い込み、
病室でそのまま一緒に飲んだ。

それから数年間できなかった話を、
二人でずっとしたんだ。


その日は禁煙していたタバコを買い
病室を抜け出しては貪るようにタバコを吸った。

控えていた酒も、浴びるほど飲んだ。


好きだった音楽を流しながら、
一緒に酒を酌み交わして、
病室でいろんな話をしたんだ。


酔っぱらってフラフラになりながら、
朝方まで一緒に飲んだ。

5月5日の夜のこと。




そして、これが最期の会話となった。


そして親父は一言もしゃべることないまま、
静かに人生の幕を下ろした。




さて、明日は親父の一周忌となる命日。
親父を偲びながら酒を飲んでいる。

あれから、俺は何も変わってない。